食中毒の予防方法と魚に潜む寄生虫

北海道のスーパーで魚屋をやって20年以上、魚のことは魚屋に聞け!!長年培った技術、経験、知識をお教えします。

私達、食品を扱う人間(家庭で食品を含め)は、『安全で衛生的な食品』を提供する義務があります。そのために、食中毒の予防方法と魚に潜む寄生虫を紹介します。

食中毒とは?

有害な菌や化学物質が含まれている食品・水を口にしたことで起こる健康障害で、主に下痢や嘔吐、発熱などの症状があります。

症状の度合いは個人の体調や体力により差があり、多くの場合は軽傷で済みますが、抵抗力のない高齢者や幼児では、命に関わることもあります。

菌が増えやすい梅雨の時期だけではなく、夏の疲れが出る秋にも発生が多いので、注意が必要です。

微生物による食中毒予防の三原則

つけない

生の食材や人体には多くの細菌やウイルスが付着しています。

これが手指や調理器具を介して食品につくと食中毒を起こします。

手や器具類を常に清潔に保ち、調理器具は使い分けることが大事です。

増やさない

食中毒の原因となる細菌は時間の経過とともに増えていきます。

菌を増やさないためには、細菌が増えやすい温度(5~65℃)と増える時間、

さらに、「栄養源(=食品残渣)」や水分をあたえないことです。

このほか、酸素、pHも細菌がふえる条件となる場合があります。

やっつける

細菌の多くは熱に弱いので、食品の中心までしっかり加熱することが効果的です。

目安は中心温度75℃で1分間。

ただし、熱に強いものもあるので、過信は禁物です。

使用した器具類は除菌剤等で消毒しましょう。

食中毒の種類

黄色ブドウ球菌

食品中で「エンテトキシン」という熱に強い毒素をつくる。

手指(特に化膿している箇所)から感染する場合が多い。

原因食品:おにぎり・サンドイッチなどの手作り食品

黄色ブドウ球菌の予防方法

ビニール手袋・サランラップ等を使い、直接、食品や調理器具に触れない。

手荒れや傷のある人は、なるべく調理を避ける。

手洗い励行(れいこう)。

カンピロバクター

僅かな菌数でも発症することがある。

低温に強い。

原因食品:精肉とその加工品(特に鶏肉に注意)

カンピロバクターの予防方法

調理時は十分に加熱する。

器具類は洗浄消毒してから、次の作業にかかる。

冷倉庫の二次汚染に注意する。

腸管出血性大腸菌O157

わずかな菌でも発症することがある。

潜伏期間が長い。

原因食品:糞便に汚染された食肉とその加工品、井戸水

腸管出血性大腸菌O157の予防方法

しっかり加熱する(中心温度75℃以上で1分間)

洗浄・消毒・手洗いの励行。

下痢をしているときは、調理をしない。

サルモレラ

二次感染が多い

原因食品:食肉や卵。特に鶏卵に注意。

サルモレラの予防方法

しっかり加熱する(中心温度75℃以上で1分間)。

ひびが入った卵は必ず加熱調理する。

ネズミ、昆虫などの侵入防止・駆除。

腸炎ビブリオ

塩分を好む。

短時間で増殖する。

腸炎ビブリオの予防方法

二次感染を防ぐ。

温度管理を徹底する。

海産魚介類は真水でよく洗う。

ノロウイルス

僅かなウイルス数でも、感染する危険性が高い。

被害は秋口から冬場に発生することが多い。

調理従事者による二次汚染が多い。

原因食品:二枚貝、井戸水

ノロウイルスの予防方法

手洗いの励行。

十分な加熱(中心部85~90℃で90秒以上)。

二次汚染を防ぐ。

調理台、調理器具は、0.02%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒、または、85℃以上の熱湯で1分以上加熱。

アニサキス

アニサキス幼虫が寄生する生鮮魚介類を食べて発症する。

わさび、醤油、酢などでは死なない。

原因食品:アニサキス幼虫が寄生している魚介類

(さば、あじ、さんま、かつお、いわし、さけ、いか)

アニサキスの予防方法

新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く。

目視で確認して、アニサキス幼虫を除去。

アニサキス幼虫は、傷つけると、すぐに死ぬので、細かく飾り包丁を入れる。

よく噛む。

さらに、予防するには、

-20℃以下で、24時間以上冷凍する。

70℃以上の熱湯で秒死、

60℃のお湯に浸けて1分間で退治できます。

魚に潜む寄生虫

天然の魚は、野菜のように農薬を使って害虫を駆除することが出来ません。

なので、天然の魚には、寄生虫が存在している場合があります。

ほとんどの寄生虫(アニサキス以外)は、食べたとしても健康被害はありません。

とは言え、商品に寄生虫が混入しているものは、お客様にとっても、不快なものです。

魚屋としては、商品に寄生虫が混入しないように毎回、毎回、目を光らせています。

もし、混入していましたら、本当にすいません。

魚に潜む寄生虫の特徴を紹介します。

ぶり糸状線虫

名前の通り、ぶり、ハマチ、いなだなどの天然のぶりの仲間に寄生しています。

食べたとしても、特に健康被害はありません。

細長い虫なので、アニサキスと混同しがちです。

かなりの高い確率で寄生しています。

サイズは5cm~60cm前後で、赤っぽい色をしています(死んでいると白色に変わります)。

厄介なことに筋肉(身)に寄生しているます。内臓なら内臓ごと捨ててしまえばいいのですが、身に寄生しているわけですから、魚屋にとっても超厄介者です。

寄生の仕方も厄介で、ミミズのように「びろーん」と伸びていたり、団子状に丸まっていたりします。

厚く切った刺身柵や切り身の場合、「びろーん」と伸びていれば発見しやすいですが、丸まっていると、分かりずらくそのまま商品として、お客様の元にわたってしまうこともあります。

取り除いてもらえれば、魚自体にはほとんど問題はないのですが、魚からミミズみたいな虫が出てきたという衝撃で食る気になれないと思ったら、購入したお店に連絡すると交換、返金等の対応をしてもらえます。

この寄生虫は、天然のぶりの仲間にかなりの高い確率で寄生していますので、魚屋としても注意はしているのですが、筋肉中に潜まられると見つけようがなく、魚に問題があるわけでもなく、魚屋が怠慢を働いたわけでもないという事実だけは知って頂けたら幸いです。

リべニア

するめいか、真鱈、すけそうだらに高い確率で寄生するしています。

食べたとしても特に健康被害はありません。

米粒みたいな虫です。

するめいかに付着しているリべニアはとても元気がいいです。

よく、すけそうだらの子に付着していますが、これすべてを取り除くことはとても大変なので、気になる方はご購入をお控えください。

テンタクラリア

かつお、まぐろの内臓や内臓周辺の筋肉に寄生しています。

食べたとしても特に健康被害はありません。

白い点のようなものでほとんど動きません。

包丁の刃先で簡単に取り除けます。

サンマヒジキムシ

さんま、めかじきなどに寄生しています。

食べたとしても特に健康被害はありません。

名前の通り、さんまにひじきが付いている感じの黒い胴体をしていて、頭が刺さっています。

さんまの体にたまにある丸い斑点はこいつの仕業です。

アニサキス

アニサキスはおきあみなどの小型のえびを介して寄生します。

これを餌としている魚に潜んでいます。

いか、さんま、ひらめ、さば、さけ、にしん、いわし、たら、ほっけなどに多く見かけられます。

まぐろ、ぶり、すずきなどにはあまり見かけられません。

養殖の魚は人工飼料で育てているのでアニサキスの心配はほぼありません。

大きさは2~3cmと、さほど大きくなく糸状をしています。

加熱してしまえば、何も問題ないですが、(アニサキス症アレルギーの方は除く)

生きたまま食べてしまうと、激しい腹痛や嘔吐などの症状を引き起こす場合があります。

なので、スーパーではアニサキスが潜んでいそうな魚を刺身用で販売していません。

もし、スーパーで販売した商品が原因で食中毒になったと判断された場合、数日間の営業停止処分になりかねないからです。

スーパーから、刺身用生いか、刺身用生さんまとか「刺身用」の言葉がなくなったのは、このせいです。

スーパーでは、お客様には、安心、安全な食材を提供する義務があるので、味よりも、安全を優先しています。

刺身用で販売するときは、必ずアニサキスを退治して販売しています。

アニサキスの退治方法

-20℃で24時間以上冷凍する。

70℃で秒死、60℃で1分間お湯に浸ける。

酢、醤油、わさびなどでは死にませんのでご注意下さい。

生のさばを酢で〆てもアニサキスは死にません。

意外と知られていないのが、いくら(生筋子)の醤油漬けです。

生鮭にもアニサキスが存在しますし、生筋子は、鮭のお腹から出てくるものなので、適切に退治してください。

生筋子のほぐし方とアニサキス退治はこちらをどうぞ!!

どうしても生で食べたい方は、こちらの方法で少しは安全に召し上がれると思います。

・目視によるアニサキスの除去

さんま、にしん、いわしなどは難しいですが、いか、ひらめなどの白身魚は身を光にかざすと透けて見えるので、アニサキス幼虫が潜んでいるかを判断出来ると思います。

・飾り包丁などを入れてアニサキスに傷をつける

アニサキスは傷を付けると、死んでしまいます。

飾り包丁を入れたり、たたきにすることで、退治することができると思います。

あと、よく噛むことで傷つけることができるかと・・・

まとめ

ほとんどの食材は加熱すれば、安心して召し上がることができると思います。

適切な予防方法を行い安心して召し上がりましょう。

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